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環境保全型農業推進シンポジウム

H21年度環境保全型農業推進シンポジウム開催報告



全国環境保全型農業推進会議  松本聰 会長

 平成11年に制定した「持続農業法」により、環境保全型農業を先進的・積極的に取り組む農業者である愛称「エコファーマー」が誕生しました。「エコファーマー」の認定件数は増加を続け、平成21年3月には18万6000件に達しました。順調に伸展しているようですが、課題も生じています。

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農林水産省生産局農業環境対策課  別所智博 課長

 昨今、環境問題をめぐる視点が多様化しています。例えば、生物多様性の問題です。来年名古屋でCOP10が予定されています。農林水産省としても、わが国の取り組みをしっかり発信していきます。また、地球温暖化対策の問題があります。農業分野については、温室効果ガスが農地から発生をしているところがあり、減らす努力が必要です。多様化する環境への視点の中で、環境保全型農業の推進についても、多様な視点が求められます。

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「IPMでつくる無農薬レモン」
河合果樹園 河合浩樹 代表
河合果樹園 河合浩樹 代表  私が目指している農業形態が3つあります。1つ目が情報発信型農業です。環境保全型や地域に貢献する農業をしていても情報を発信しないと何も伝わりません。 2つ目が企画提案型農業です。例えば私どもが提案を行った「初恋レモンプロジェクト」は、5社の加工業者と連携し、加工品を販売しています。3つ目は環境保全型農業です。極力、農薬、化学肥料を抑制します。ホテルと契約して、乾燥した生ごみをうちが発酵させて使うという提案もしています。

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稲作農家全戸で取り組む「人づくり・土づくり・米づくり」
JAあまるめランド米振興会 佐藤一彦 会長
JAあまるめ営農部  佐藤隆一 部長
JAあまるめランド米振興会 佐藤一彦 会長
JAあまるめ営農部 佐藤隆一 部長

 JAあまるめブランド米振興会では安全・安心な米づくりと環境保全型農業に取り組みを行っています。当JA管内の稲作農家全戸を会員として(1)稲作農家全員の意思が反映される組織(2)土づくり環境保全型農業の推進(3)消費者に信頼されるおいしい米づくりを目的としています。

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「IPMと微生物防除剤体系について」
セントラル硝子株式会社 常務執行役員  高原吉幸 氏
セントラル硝子株式会社 常務執行役員 高原吉幸 氏  農業の持続的発展と技術革新の必要性という観点から、農業を取り巻く環境政策を眺めてみます。農業は経済活動なので、効率性・生産性・高品質が重要です。社会的には、食の安全・安心という観点から、品質水準の改善と健康の維持というものがあります。環境の観点からは、地球環境への影響を最小化、天然資源の保護が挙げられます。「経済」「社会」「環境」の3つがバランスをとって農業が持続的発展をしていかなれければいけません。

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「環境保全型農業とマスメディア報道の課題」
科学ライター 松永 和紀 氏
JAあまるめランド米振興会 佐藤一彦 会長

 私の仕事は、イメージと本質の間にある距離を探って本質を多くの人に伝えることです。環境保全型農業を少し離れたところから見ると、いくつか疑問があり、今日は2つの話をします。1つ目は、現代の農薬、化学肥料の科学的な性質が、生産者、消費者に理解されているかという点です。農薬は悪い、化学肥料は危険だと消費者の誤解を利用して、環境保全型農業を進めた方が一部にいるという印象があります。2つ目は、現在の「環境保全型農業」は本当に環境保全になっているのがという点です。イメージで、「環境によい」とされているのではないかと思います。

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H21年度環境保全型農業推進シンポジウム開催のご案内
参加申込み受付中!!(申し込み〆切を延長!)

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○開催趣旨
環境問題に対する国民の関心が高まる中で、我が国農業生産全体の在り方を環境保全を重視したものに転換し、農業生産活動に伴う環境への負荷の低減を図ることがもとめられています。その一方で、環境に配慮した生産活動を行う上で、コストの増加をはじめとして様々な課題があります。
本シンポジウムでは、実際に環境保全型農業を実行している農業者の取り組みの紹介、現場での普及がすすめられている総合的病害虫防除方法や環境保全型農業の今後の課題についての講演をします。環境保全型農業について国民に向けて幅広く情報を発信し、理解をよびかける機会とすることを目的として開催します 。

○日 時
平成21年12月3日 13:00〜16:30

○会 場
日経カンファレンスルーム(東京都千代田区大手町1-3-7)アクセスはこちら

13:00

開会・あいさつ(全国環境保全型農業推進会議 会長 松本 聰 氏)

13:10〜13:40

H20年度環境保全型農業推進コンクール受賞者
取組事例発表@河合果樹園
・IPMを用いた無農薬レモン

13:40〜14:10

取組事例発表AJAあまるめブランド米振興会・余目町農業協同組合
・稲作農家全戸で取り組む「人づくり・土づくり・米づくり」
・地域全体で耕種的防除の徹底と十分な効果を得られる最小限の薬剤防除

14:10〜14:25

休憩(15分)

14:25〜15:25

基調講演@日本微生物防除剤協議会
セントラル硝子(株)常務執行役員 高原吉幸 氏
「IPMと微生物防除体系について」

15:25〜16:25

基調講演Aサイエンスライター 松永和紀 氏
「環境保全型農業とマスメディア報道の課題」

16:25〜16:30

閉会・あいさつ

○参加費用
無料

○参加申込 〆切日を延長しました!
11月27日(金)までに (1)氏名 (2)所属 (3)電話番号 (4)住所を全て明記し、下記の申込先(全国農業協同組合中央会)までお申し込みください。申込様式は、問いません。
なお、定員(180名)になり次第、申込の受付を終了いたします。

○申込み・問合せ先
【全国環境保全型農業推進会議 事務局】
JA全中 食の安全・安心対策課
E-Mail :anan.s@zenchu-ja.or.jp FAX :03-3217-5073

○主催 
全国環境保全型農業推進会議

○後援
農林水産省


平成20年度環境保全型農業推進シンポジウム70人参加
/2008年10月22日・東京大手町のJAビル

 全国環境保全型農業推進会議は10月22日、東京・JAビルで平成20年度環境保全型農業推進シンポジウムを開きました。 環境保全型農業に取り組む農業者や関係団体などから70人が参加し、講演や実践報告を通じて環境保全型農業の現状と今後の環境保全型農業の在り方について理解を深めました。

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|【現地の活動報告】 宮城県大崎市(1)宮城県大崎市(2)京都府京丹後市全体質疑

主催者あいさつ
全国環境保全型農業推進会議 会長 松本 聰 氏
シンポジウム
シンポジウム
松本会長
松本会長

 環境保全型農業推進への皆さまの取り組みは年々、着実に成果を上げています。全国のエコファーマーの数は、平成20年3月末で約17万に達しました。とりわけこの2〜3年は、1年間で2〜4万人の増加となっています。

 農地の炭素貯留機能の詳しい仕組みが明らかになり、この機能が温暖化防止に大きな役割を果たすと大きく報道されました。また、消費者も環境保全型農業に興味を示しています。環境保全型農業の推進にとっては、順風の状況だといえるでしょう。これも、皆さんからのご支援の賜物です。

 今日は先進的な取り組み事例が報告されます。皆さまの活発なご議論をお願いいたします。

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環境保全型農業を巡る情勢
農林水産省生産局農業環境対策課課長 別所 智博 氏

 農業は環境保全に役立つ多面的な機能を持っています。国民も農業は環境を守るものだとの受け止めています。しかし実際には、施肥や防除、かんがいといった作業そのものが環境に負の影響を与えています。そこで食料・農業・農村基本計画のなかで、日本農業全体を環境保全型に切り替える目標が掲げられました。

別所課長
別所課長

 推進の道具として農業環境規範があります。農業者が簡単に取り組める7つのポイントを設定し、これと政策的支援と結びつけています。この関連付けは現在、51事業にまで広がってきています。2番目の道具としてエコファーマーの推進があります。エコファーマーのメリットには、農業改良資金の特例措置の他、農地・水・環境保全向上対策の政策的支援があります。この施策は、環境直接支払いの端緒となるものだと考えています。また、議員立法で有機農業推進法が成立しました。新たな取り組みとしてインターネットを活用したオーガニックモデルタウン事業があります。

 これまでの取り組みの結果、エコファーマーは飛躍的に伸びています。土づくりやフェロモン剤の利用といった取り組みも増えています。農薬使用量や施肥量は全体的には減少しています。亜酸化窒素の削減は、これからの課題です。

 環境保全型農業による生態系の保全に注目が集まっています。兵庫・豊岡のコウノトリや新潟・佐渡のトキとの共生の取り組みです。

 課題は、取り組んでいる農家の負担が大きいという面です。慣行栽培に比べて苦労の多い環境保全型農業をどのように評価し、経済的メリットにつなげるのか。まだまだ不十分だと考えます。流通業者や消費者を巻き込む取り組みも重要です。このシンポジウムも、対象を広げていきたいと考えてます。

 また、農業の公益的機能をどのように高めていくかの観点で施策を考えていきたいと思っています。具体的な取り組みでは、個人的には土づくりに着目しています。たい肥を土に戻すことで、土壌有機の改善、生産性の向上、炭素貯留機能の向上が可能になるからです。炭素貯留機能は、温暖化防止にもつながります。ただ、言うのは優しいが、たい肥の確保や利用には大きなエネルギーが必要です。どのように推進していくかが農水省に課せられた宿題だと認識しています。

環境保全型農業の推進について(PDFファイル)

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基調講演
「地球温暖化の影響と農業に求められる役割」
 国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニット
 所長 あん・まくどなるど氏

【環境保全型農業との出会い】

あん・まくどなるど氏
あん・まくどなるど氏

 今日は、私が日本の農業の現場を回ったときに感じたことを中心に話をしたいと思います。

 1989年に長野県で田植えを経験したときのことです。お世話になっている農家に1枚の水田に施されている肥料や農薬がどれだけの量になるのかを聞きましたが、考えたことがないという答えが返ってきました。実際に、環境負荷について考えながら農業をしている人は、当時あまりいなかったのではないかと思います。

 そんな中で環境保全型農業推進会議の委員へのお誘いがありました。光栄に思う反面、戸惑いもありました。それは、任命期間が10年と長いことでした。環境保全型農業が普及・定着するには1〜2年の短期間では難しく、10年は必要なのでしょう。

 慣行栽培に代わって環境保全型農業が本当に主流になるのか、疑問と興味があって委員を引き受けました。農業の現場で人間と自然の共存ができるのか、環境保全に対して高い認識を持った人が育つのか、興味がありました。農業には、環境に対して負の影響も与える側面もありますが、こうした認識が広く浸透してきていると感じています。10年間で17万人のエコファーマーが誕生したのは、皆さんが一歩ずつ進めてきた活動の成果だと考えます。

 1999年から2007年まで、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の日本政府の委員を務め、気候変動による食料生産や生態系への影響について話し合いました。

 人間は国境(ボーダー)のなかで生活していますが、環境問題はボーダーレスで進行しています。環境保全型農業においては、国内、海外の両方の目線で考えることが必要です。今後、環境保全型農業について情報発信していく場合、国内における環境保全型農業の役割だけでなく、世界規模の気候変動と結びつけてメッセージを発信することが大事です。

【気象変動と農業】

 農業と気候変動の関係を考える上で、農業が被害者になったり、加害者になったりするということを認識しなければなりません。被害者とは、生産量が減ったり、栽培作物を変えたりしなければならないということです。気温上昇により品質も低下するおそれがあります。とりわけ作物中の栄養価が顕著に低下すると考えられています。加害者とは、化石燃料を使って二酸化炭素など温室効果ガスを排出しているという側面です。環境保全型農業に取り組む農家でも、草刈りなどに化石燃料を使っている部分があります。

 今後、環境保全型農業に取り組んでいない人に対する認識を高めていく必要があると思います。

 2007年に第4次IPCCパネル評価が承認されました。農業の現場では、どのような受け止められ方をしているのか知りたいと思い、全国で調査を行いました。

 青森では、リンゴ農家が孫に対して、リンゴ以外の果樹について勉強するよう教えていました。青森のようなリンゴの大産地であっても、孫の代にはリンゴが栽培できないかもしれないという危機感を持つほど、農家が気候変動の影響を身近に感じていることを実感しました。

 香川では、この地域が21世紀の農業と水のあり方で日本をリードする力があると感じました。香川では、古くからため池を活用しながら渇水と戦ってきました。このように先端技術と伝統的な知恵を組み合わせることが重要です。また、三重県尾鷲では近年、雨の降り方が大きく変わっているという話を聞きました。雨が降らない日が何日も続き、雨が降るときにはスコールのように激しくなっているということです。

 九州では、気候変動による農産物の質と量の変化について考えさせられました。高温障害の発生で1等米比率が低下して、経済的な影響も出ています。そのため品種改良で高温障害に強い「にこまる」が導入されていますが、気候変動に対応した作物を作るだけでは根本的な解決にはならないと考えます。

 また、環境保全型農業では、河川や地下水、海への影響についても考えてほしいと思います。森や田畑と海は、つながっているのです。石垣島では台風の後、珊瑚礁が大きな被害を受けるという話を聞きました。それは、パイナップルからマンゴーへの作物転換が影響しているのではないでしょうか。マンゴーはパイナップルよりも農薬をたくさん使います。流失した農薬が海に流れ込み珊瑚礁にダメージを与え続け、台風でそれが明らかになったという構図です。

【更なる情報発信と工夫を】

基調講演
基調講演

 気候変動による影響を考える上で、社会コミュニティーの脆弱性についても考えなければなりません。食料生産が低下すれば、農業を生活基盤とする農村も打撃を受けます。

 環境保全型農業を巡る情勢は、順風だと考えます。今後は、こうした取り組みがさらに広がるように情報発信に工夫をしなければなりません。積極的にネットワークを構築し、情報発信をしていくことが重要だと思います。

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|【現地の活動報告】 宮城県大崎市(1)宮城県大崎市(2)京都府京丹後市全体質疑

現地の活動報告
ラムサール条約湿地「蕪栗沼・周辺水田」地域での取り組み
〜生物多様性を育む持続可能な農業と地域づくり〜
ラムサール条約湿地「蕪栗沼・周辺水田」地域

 伸萠集落に隣接した蕪栗沼には、年間約4万羽以上のマガンを中心とした渡り鳥が飛来する渡り鳥の楽園です。しかし平成10年春には、渡り鳥による農作物の食害が発生しました。その対応として旧田尻町で、被害にあった農業者を補償する制度を設けました。しかし、補償制度では被害を食い止めることができないため、根本的な解決にはなりません。

三浦幸一氏
三浦幸一氏

 そこで、水田の持つ二次的自然環境の維持保全と水田に依存する渡り鳥との共生を図りながら、付加価値の高い米の生産・販売による農業経営の向上を図ろうと考えました。「冬期湛水水田(ふゆみずたんぼ)」の取り組みを実践する「伸萠ふゆみずたんぼ生産組合」を設立。化学肥料・化学合成農薬を使わない栽培を実践し、JAS有機認証を取得しました。

 多くの渡り鳥が飛来する水田で収穫した米という付加価値を付けて販売しています。地元酒造メーカーと連携し、JAS有機ふゆみずたんぼ米「ササニシキ」100%の酒も販売しました。環境を良くする取り組みが経済効果を生み、さらに環境を良くすることにつながると考えています。

 今後の課題は、ふゆみずたんぼの取り組みを広げ、付加価値の高い米づくりに地域全体で取り組むことです。

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|【現地の活動報告】 宮城県大崎市(1)宮城県大崎市(2)京都府京丹後市全体質疑

 全国的に渡り鳥の越冬地が減っているため、蕪栗沼には渡り鳥が集中して沼の水質汚濁や周辺の食害被害といった問題が生じていました。そこで周辺の水田を冬期湛水して、渡り鳥のねぐらや休み場を分散して問題を解決しようとしました。

西澤誠弘 氏
西澤誠弘 氏

 伸萠ふゆみずたんぼ生産組合では、冬期にパイプを設置し、ポンプで水を入れています。雪の中の作業もありますし、冬でもけい畔の管理が必要といった苦労もあります。

 ふゆみずたんぼを実践すると、水田には生きものが多くなります。冬でも水温が高いのでザリガニなども生息しています。夏場には、水稲の上にクモが巣を張ります。イトミミズも増え、水田の土壌も肥よくになりました。どれだけの生きものがいるのか、田んぼの生きもの調査を実施しています。

 農地・水・環境保全向上対策に取り組むNPO法人が集まって交流会を開きました。地元の子どもたちを対象とした出張蕪栗沼という生きもの調査もやっています。子どもたちが水田に戻ってきてにぎやかにになっています。

 生産した米は、地域の学校給食に活用しています。給食のおかずも、地場産農産物を使っています。近隣には環境保全型米の「鳴子の米プロジェクト」と「シナイモツゴ郷の米」がありますが、連携して大崎ブランドとして売り出したいと考えています。

 首都圏の生協との交流会の後、参加した子どもが作文を送ってくれました。ご飯を食べることで、生きものと共存していることを感じてくれました。ふゆみずたんぼの取り組みで、こういう感性を持った子どもが育てられることが分かりました。また、こういう子どもたちを多く育てていきたいと思います。

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|【現地の活動報告】 宮城県大崎市(1)宮城県大崎市(2)京都府京丹後市全体質疑

環境保全型農業の実践〜新たな技術導入への試み〜
京都府京丹後市

 自分でできるところから環境保全に貢献したいと考え、環境保全型農業に取り組んでいます。家族5人の経営で、水稲14.2ヘクタールを始め、採取ダイコンや露地メロン、ブロッコリーなどを生産しています。

 取り組みのきっかけは、地域の旅館からカニ殻をもらってメロン栽培に活用したことです。地域の有機質資源を活用できることが分かりました。平成3年から始めた特別栽培米の直販のなかで消費者の声に応えるようと、環境保全型農業に取り組みを始めました。また、おいしさや肥料・農薬を抑えた栽培方法が販売戦略にもなると考えました。米は、全量販売できており、供給が間に合わないので面積を拡大したいです。

 具体的に導入している技術で特徴的なものとして、カニ殻を使った土づくりや、種子の温湯消毒、米ぬかペレットの散布による除草剤の低減、アイガモ農法の導入などが上げられます。また、野菜栽培では、性フェロモン剤や緩効性肥料を使って化学肥料施肥量、農薬使用量を抑えています。

 こうした生産現場の取り組みを消費者に情報発信し、顧客との信頼関係づくりが重要だと考えています。情報発信の方法には、ホームページやタケチャンファームニュースの発行、ブログによる近況報告などがあります。ニュースは10年ほど前からを発行していて、顧客のなかには愉しみにしてくれる人も増えています。農薬の使用状況については、ホームページで紹介し、消費者に理解を求めています。このほかの生産資材の活用も、すべて記録して開示しています。

野木武 氏
野木武 氏

 環境保全活動は農家である自分ができることから始めたいと考えて取り組んできました。河川や水を汚さないように、環境NPO法人との交流を通じて、使用済み天ぷら油の回収・リサイクルを行い、回収した天ぷら油はトラクターなど農機に使っています。環境美化活動の一環として河川の清掃活動も行っています。肥料袋や育苗ポットなど農業廃棄物が多いのには驚きました。

 京都エコプロジェクトで小型の風力発電機を導入しました。風車は、農場のランドマークにもなっています。発電量は毎日1キロワット。これは、4人家族が1日に使う電力の半分に当たります。また、食品残さのたい肥化実証試験にも取り組んでいます。

 次代を担う子どもたちに農業や環境のことを使える取り組みも重要です。農業の楽しさ、つらさを分かってもらうため、中学生の職場体験や小学生の田植え・稲刈り体験などを行っています。農業を知らない子供が増えていると実感しています。

 今後は、環境負荷の小さい地域循環型農業を実践しながら、「こだわり」と「物語性」を商品に付けた販売を追求していきます。また、生産の工程管理を充実させるとともに、顔の見える販売を続けていきたいです。

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全体質疑・意見交換
全体質疑 全体質疑

松本会長

 会場から質問や意見を募りたいと思います。
出席者  欧米では、炭素貯留機能について企業が支払っていると聞きます。どのようなことか詳しく教えてください。
別所氏  二酸化炭素を排出する企業が、企業努力だけでは削減できない部分について、ほかの人に削減をお願いするという取り組みの一つです。農地の中に炭素を貯留することに対して、二酸化炭素排出企業が一定のお金を支払うという仕組みです。この仕組みを導入するには、企業ごとに排出できる二酸化炭素の量を決めること、人に頼んで削減してもらっても良いという制度の整備、社会的な理解醸成などのルールが必要です。今後、こうしたことを十分に念頭に置きながら施策を作っていくことが課題だと認識しています。
出席者  中山間地域では、鳥獣被害が大きな問題になってきています。今後の野生鳥獣との共生の在り方についてご意見を伺いたいと思います。
西澤氏  伸萠ふゆみずたんぼの取り組みは、渡り鳥による食害の急増がきっかけでした。冬期湛水水田で、えさがある場所をたくさん作って分散することで、食害を抑えようとするものです。ふゆみずたんぼに取り組むまでは、すべての農家が慣行栽培でした。労力は増えるが収量は落ちるという問題もありましたが、食害を減らすには、息の長い取り組みが必要だと認識していました。結果として付加価値の高い米づくりにつながり、農家の経済的なメリットがでました。
まくどなるど氏  宮城県に住んでいたとき、サルが人里近くに定住してしまったのを体験しています。この群れは、栄養状態が良くなり、繁殖期間が短くなりました。個体数が増え、ますますサル害が深刻になるという悪循環を招きました。野生鳥獣との共生は、従来の保護の観点から、個体数を管理しようとする観点へと変わっています。バランスのとれた共生の在り方について議論が必要だと思います。
松本会長  私が子どものころは、山の管理を徹底していたから、どんな山でも、山の幸を得ることができた。今では、過疎化や高齢化で山が荒れ、山の恵みが少なくなってきている。これが、野生鳥獣を人里に呼び寄せているのだと考えます。
出席者  今後は国民や消費者が環境保全型農業を支える仕組みに変わらなければならないと思いますが、皆さんの意見を伺いたいと思います。
まくどなるど氏  里山が6割を占める石川県では、里山の利用や保全に関するビジョンづくりに取り組んでいます。ビジョンには生物多様性や気候変動など幅広い観点を盛り込みます。2010年までに策定する方針です。県の政策づくりもビジョンに基づいてやっていく。こうした地域や県からのボトムアップの政策づくりが重要だと考えます。
野木氏  若い頃、仲間の農家とともに「国民合意がなければ農業を守れないのではないか」という熱く語り合ったことを思い出しました。農地・水・環境保全向上対策が打ち出され、ついに当時の考え方が浸透してきたという感じです。この政策は、環境保全の取り組みに対して消費者、国民が直接、負担する仕組みですから。
  これに農業サイドが、どう応えていくかが問題だと思います。また、消費者アピールもさらに重要になってくるでしょう。環境保全型農業でも経済メリットがなければ続けられません。グローバル化のなかで危機感を持ちながら、肥料や農薬を使っていく必要があるのでしょう。
  資材だって輸入されているのですから。今後も自分のできることから、環境保全型農業を進めていきたいと思います。
三浦氏  環境負荷の低減と有機農業の実践の両立は非常に困難な取り組みです。ふゆみずたんぼの取り組みを始めるに当たっては抵抗もありました。除草剤や農機が導入されて、楽に作業ができるようになったのに、何で昔の農業に戻らなければならないのかという意見もありました。息の長い取り組みとなることができたのは、10人でスクラムを組んでやってきた結果だと思います。今後の課題としては、水田の基盤整備だと考えています。必要な時期に必要な量の水が入れられない状況です。水が入らないと、夏場の除草が非常に難しいのです。
西澤氏  ふゆみずたんぼの取り組みをやって良かったのは、多くの人が水田に戻ってきたということです。有機栽培では米の状態を注意深く観察することが重要です。家族が水田の見回りをしてくれるようになったし、子どもたちも生きもの調査などを通じてたくさん来てくれるようになりました。環境保全型農業に対して、世論も追い風になっていると感じます。仲間と一緒に、さらに息の長い取り組みにしていきたいです。
野木氏  環境保全型農業を推進するために、今後はさらに情報発信の取り組みを強化する必要があると考えています。みんなでスクラムを組んで環境保全型農業に取り組もうと思うような情報発信をお願いします。
別所氏  環境保全型農業の推進のための次のステップに向けた視点を提示したいと思います。安全・安心、地産地消、有機栽培などのキーワードが浸透してきています。しかし、今後の国民理解のためには、新たな視点が必要だと考えます。
  例えば、サッカーにおけるチームとサポーターのような関係をつくっていくことが今後の課題でしょう。また、量販店や大手の流通業者との連携も重要だと思います。そのためにも、産地の努力や商品も魅力を発信して売り込むというJAの役割にも期待しています。また、農業が二酸化炭素の排出を抑えているということを示すような表示ができないか研究を始めています。
松本会長   環境保全が膨らみつつあり、その膨らみが次のステージを生みつつあると感じています。さらなる発展のためには、次の世代を育てることが大事です。
  環境保全型農業のさらなる発展のために、今後も皆さんのお力をお借りしたいとおもいます。

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