【環境保全型農業との出会い】
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| あん・まくどなるど氏 |
今日は、私が日本の農業の現場を回ったときに感じたことを中心に話をしたいと思います。
1989年に長野県で田植えを経験したときのことです。お世話になっている農家に1枚の水田に施されている肥料や農薬がどれだけの量になるのかを聞きましたが、考えたことがないという答えが返ってきました。実際に、環境負荷について考えながら農業をしている人は、当時あまりいなかったのではないかと思います。
そんな中で環境保全型農業推進会議の委員へのお誘いがありました。光栄に思う反面、戸惑いもありました。それは、任命期間が10年と長いことでした。環境保全型農業が普及・定着するには1〜2年の短期間では難しく、10年は必要なのでしょう。
慣行栽培に代わって環境保全型農業が本当に主流になるのか、疑問と興味があって委員を引き受けました。農業の現場で人間と自然の共存ができるのか、環境保全に対して高い認識を持った人が育つのか、興味がありました。農業には、環境に対して負の影響も与える側面もありますが、こうした認識が広く浸透してきていると感じています。10年間で17万人のエコファーマーが誕生したのは、皆さんが一歩ずつ進めてきた活動の成果だと考えます。
1999年から2007年まで、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の日本政府の委員を務め、気候変動による食料生産や生態系への影響について話し合いました。
人間は国境(ボーダー)のなかで生活していますが、環境問題はボーダーレスで進行しています。環境保全型農業においては、国内、海外の両方の目線で考えることが必要です。今後、環境保全型農業について情報発信していく場合、国内における環境保全型農業の役割だけでなく、世界規模の気候変動と結びつけてメッセージを発信することが大事です。
【気象変動と農業】
農業と気候変動の関係を考える上で、農業が被害者になったり、加害者になったりするということを認識しなければなりません。被害者とは、生産量が減ったり、栽培作物を変えたりしなければならないということです。気温上昇により品質も低下するおそれがあります。とりわけ作物中の栄養価が顕著に低下すると考えられています。加害者とは、化石燃料を使って二酸化炭素など温室効果ガスを排出しているという側面です。環境保全型農業に取り組む農家でも、草刈りなどに化石燃料を使っている部分があります。
今後、環境保全型農業に取り組んでいない人に対する認識を高めていく必要があると思います。
2007年に第4次IPCCパネル評価が承認されました。農業の現場では、どのような受け止められ方をしているのか知りたいと思い、全国で調査を行いました。
青森では、リンゴ農家が孫に対して、リンゴ以外の果樹について勉強するよう教えていました。青森のようなリンゴの大産地であっても、孫の代にはリンゴが栽培できないかもしれないという危機感を持つほど、農家が気候変動の影響を身近に感じていることを実感しました。
香川では、この地域が21世紀の農業と水のあり方で日本をリードする力があると感じました。香川では、古くからため池を活用しながら渇水と戦ってきました。このように先端技術と伝統的な知恵を組み合わせることが重要です。また、三重県尾鷲では近年、雨の降り方が大きく変わっているという話を聞きました。雨が降らない日が何日も続き、雨が降るときにはスコールのように激しくなっているということです。
九州では、気候変動による農産物の質と量の変化について考えさせられました。高温障害の発生で1等米比率が低下して、経済的な影響も出ています。そのため品種改良で高温障害に強い「にこまる」が導入されていますが、気候変動に対応した作物を作るだけでは根本的な解決にはならないと考えます。
また、環境保全型農業では、河川や地下水、海への影響についても考えてほしいと思います。森や田畑と海は、つながっているのです。石垣島では台風の後、珊瑚礁が大きな被害を受けるという話を聞きました。それは、パイナップルからマンゴーへの作物転換が影響しているのではないでしょうか。マンゴーはパイナップルよりも農薬をたくさん使います。流失した農薬が海に流れ込み珊瑚礁にダメージを与え続け、台風でそれが明らかになったという構図です。
【更なる情報発信と工夫を】
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| 基調講演 |
気候変動による影響を考える上で、社会コミュニティーの脆弱性についても考えなければなりません。食料生産が低下すれば、農業を生活基盤とする農村も打撃を受けます。
環境保全型農業を巡る情勢は、順風だと考えます。今後は、こうした取り組みがさらに広がるように情報発信に工夫をしなければなりません。積極的にネットワークを構築し、情報発信をしていくことが重要だと思います。 |